万葉集や北前船ゆかりの伏木で歴史散歩|勝興寺や万葉歴史館など見逃せない高岡の名所4選
万葉集や北前船の歴史が息づく富山県高岡市・伏木エリア。
この記事では、国宝に指定された【勝興寺】をはじめ、【高岡市伏木北前船資料館】【高岡市伏木気象資料館】【高岡市万葉歴史館】という4つの文化施設をめぐる歴史散歩をご紹介します。
万葉の時代から江戸時代、明治時代とさまざまな時代を体感できること間違いなし!観光にはもちろん、夏休みの自由研究にも最適です。
地元で人気のベーカリーやカフェ、ラーメン店など、立ち寄りスポット情報もお届け。
歴史・文化・グルメを一度に楽しめる伏木の魅力を、ぜひ感じてください。
高岡ナビライター:攸永 あおい
目次

富山県高岡市「伏木」ってどんな町?
富山県高岡市の伏木エリアは一見静かな港町ですが、実は、古代から近代にかけて日本の交通・政治・文化の重要な拠点として栄えた、歴史好きにはたまらないエリアなんです。
富山県内で、最も早く開かれた町のひとつで、奈良時代にはこの地に越中国(現在の富山県)の国府=地方行政の中心地が置かれていました。
そして、当時のエリート官僚であった大伴家持(おおとものやかもち)がこの地に赴任し、多くの歌を詠んだことでも知られています。
国府の儀式や政務の場であった国庁が実際にあったのは、現在の勝興寺の場所、大伴家持が住んだ国守館は伏木気象資料館がある場所といわれ、目印として大伴家持が詠んだ歌を刻んだ石碑が建っているので、散策の際には見逃さないで。
また、古くから伏木は交通の要所としても重要な地位を占めていました。
特に江戸時代には、大阪と北海道を結ぶ海上交易ルート、北前船の寄港地として賑わいました。
物資や文化が行き交い、町は大いに発展。今でも往時の賑わいを伝える資料館が残っています。
そしてもう一つ、伏木を語るうえで欠かせないのが、浄土真宗の名刹・勝興寺。室町時代から、真宗王国・越中の重要な地位にいました。
現在、境内の建造物群が国宝に指定され、改めてその歴史的価値に注目が集まっています。
歴史好きはもちろん、はじめて伏木を訪れる人にもきっと新鮮な発見があるはずです。
Column
①勝興寺|国宝に指定された高岡の名刹
勝興寺は、長い歴史とたくさんの見どころが詰まった、浄土真宗のお寺です。
2022年には、「本堂」と「大広間及び式台」が国宝に指定されて、今まさに注目を集めているスポットなんですよ。
大修理を経て蘇った美しい建築や、境内に隠された「七不思議」など、見どころが盛りだくさん!
歴史好きさんはもちろん、家族連れの方にもおすすめです!
勝興寺ってどんなお寺?
勝興寺のはじまりは、1471年。
室町時代に、本願寺八世の蓮如上人(れんにょしょうにん)が、越中の地での布教の拠点として開いた土山御坊(南砺市)がルーツとされています。
その後、1584年(安土桃山時代)に現在の高岡市伏木の地に移転し、なんと440年以上も当時の境内地を守り続けています。
戦国時代には、一向一揆を主導する政治的に重要な地位にあり、戦国武将も無視できない影響力を持っていました。
唐門をくぐると、白い石が敷き詰められた広い境内と大きく屋根を広げた本堂が目に飛び込んできます。
静謐さ、荘厳さ、重厚感。さまざまな雰囲気が内包された空間に圧倒されました。
勝興寺の見どころ。「本堂」と「大広間及び式台」が国宝に
勝興寺の中心をなす本堂や勝興寺に現存する最古の大広間・式台など、歴史的建造物のほとんどは、江戸時代に建てられた、歴史ある建物。
しかし、長い時間がたって建物もかなり傷んでいたため、1998年からなんと23年がかりの大修理が行われました。この修理工事では、瓦に葺きかえられていた屋根を、建築当初の「鉛板葺」(鉛は有毒なため、実際は亜鉛で代用)に戻すなど、建てられた当時の姿に復元しています。
歴史的・文化的価値と丁寧な修理が評価され、2022年に「本堂」と「大広間及び式台」が国宝に指定されました!
また、勝興寺の魅力は、国宝だけではありません。
多くの重要文化財や県指定文化財の建物・絵画・古文書などを所有しています。
緻密に垂木や虹梁が組み合わさった本堂の屋根にはただただ感嘆しました。細かく彫られた欄間、生き生きとした動物や植物が描かれた襖絵や障壁画など、江戸時代の職人さんたちの技術のすごさを感じてください。
「七不思議」を探して境内を探検しよう!
勝興寺には、ちょっと変わった楽しみ方もあるんです。
それが「勝興寺の七不思議」。
たとえば「水の涸れない池」や「天から降った石」など、境内には不思議な言い伝えがたくさん!
まるで宝探しのように楽しめるので、お子さん連れのご家族にもおすすめですよ。
基本情報
勝興寺
住所: 〒933-0112 富山県高岡市伏木古国府17-1
電話番号: 0766-44-0037
休業日: 無休
アクセス: JR氷見線伏木駅から徒歩約5分、能越自動車道高岡北ICから車で約15分
駐車場: あり(無料)

②高岡市伏木北前船資料館|商人文化と伏木の繁栄を知る
江戸時代から明治時代にかけて、大阪と北海道を結ぶ海の交易ルート「北前船」。
その寄港地として栄えたのが、ここ富山県高岡市伏木です。
そんな伏木の歴史を今に伝えてくれるのが、高岡市伏木北前船資料館(旧秋元家住宅)。
当時の商人の暮らしぶりや物流の様子を、実際に使われていた屋敷や蔵を見ながら体感できるスポットです。
北前船で栄えた伏木の歴史を知る
伏木は、日本海側を南北に結ぶ海上交易ルート「北前船」の寄港地として発展しました。
特に私が興味深かった積み荷が、鰊肥(れんぴ)。北海道で水揚げされたニシンは、肥料(鰊肥)として加工され、伏木港から越中の田畑へと運ばれました。こうして越中の農業を支えた北前船は、さらに伏木で米を積み込み、瀬戸内海を通って大阪へ。まさに日本の経済を動かす、重要な“物流の拠点”だったんです。
北前船資料館では高岡で鋳造された鰊肥用の大鍋を見ることができます。「鋳物の町高岡」と「米どころ富山」の経済が北前船で日本各地と結ばれていたことが実感できて、感動しました。
豪商の屋敷「旧秋元家住宅」を見学
資料館として公開されているのは、かつて廻船問屋として繁栄した「秋元家」のお屋敷。
伏木にはかつて7〜8軒の大きな廻船問屋がありましたが、現存しているのはこの秋元家と、もうひとつの棚田家のみ。
しかし、棚田家は2024年1月の能登半島地震の被害により居住が困難となり、取り壊しが決定してしまったそうです。
今では、当時の廻船問屋の暮らしや文化を体感できる貴重な建物が、この北前船資料館だけとなってしまいました。
非常に立派な秋元家のお屋敷ですが、決して大きな部類ではないそう。江戸、明治の時代にはもっと大きなお屋敷が存在したとは驚きです。
展望台「望楼」から望む、かつての海の風景
蔵の屋根には、展望スペース「望楼」があります。なんと、今も登ることができます!
急で、天井の低い階段を登っていくのはまるで探検のようでドキドキ。そして、高台に建てられた蔵の最上部からの見晴らしは最高。
現在は海岸線が遠のき、当時のように海を一望することはできませんが、海の向こうに立山連峰を望むことができ、かつての商人たちが見ていた風景を想像することができます。
蔵には北前船にまつわる貴重な資料が多数
母屋のほか、敷地内では2つの蔵が一般公開されています。
蔵の中には、当時の商人たちの暮らしや航海に関する資料、船の模型などがずらり。
歴史好きの方はもちろん、建物そのものに興味がある方は蔵の造りを、アート好きの方は色鮮やかな引札(今でいう広告ポスター)や船絵馬をじっくり楽しめますよ。
基本情報
高岡市伏木北前船資料館
住所: 〒933-0112 富山県高岡市伏木古国府7-49
- 電話番号: 0766-44-3999
休業日: 火曜日(祝日の場合はその翌日)、12月29日~1月3日
アクセス: JR氷見線伏木駅から徒歩約10分、能越自動車道高岡北ICから車で約15分
駐車場: あり(無料)

③高岡市伏木気象資料館|全国初の民間測候所が起源!
高岡市伏木気象資料館は、明治16年に創立された全国初の民間測候所を起源とする施設で、レトロかわいい洋風木造建築が目印です。現在の建物は3代目で、明治42年に海岸に隣接していた臥浦(ふしうら)地区から、丘の中腹にある現在の場所に移転しました。
館内では、この測候所が造られた経緯やさまざまな気象観測機器・資料が展示されています。
明治以来の気象観測資料が展示
館内には、当時実際に使用されていた気象観測機器や、明治時代の手書きの日誌などが展示されています。
何行も書かれている日もあれば、数行しか書かれていない日もあって。時代を越えて、記録した人の人柄やその日の気分が見えるような気がして面白かったです。
少し不思議で、意外な展示物が、阪神淡路大震災時に淡路島で記録された地震観測データ。どんな経緯でこの貴重な資料が伏木にやってきたのか分からないそうですが、気象に関する資料館として重要な役割を担っていることがうかがえます。
現役の気象観測所
資料館の隣では、今もいくつかの観測機器が稼働しており、ここから自動で送られたデータは現在の高岡市(伏木)の気象情報として活用されています。
野原からニョキニョキ生えているいくつかの「棒」にしか見えないのに、すべて自動で作動するハイテク機器。機器の整備も敷地の管理も、数カ月おきにある程度らしく、複数人が常駐していた時代からすごく進んでるんだなぁと感心しきり。
昭和の測風塔と復原された洋館の塔屋
資料館の左手にある無骨なコンクリート製の建物は、昭和の時代に建てられた「測風塔」。明治の木造建築では重い観測機器に耐えられず、新たに建設されたものです。実用性を追求した、冷たくも感じられるその姿は、昭和的な建築の美学を感じます。
また、洋風木造建築の2階部分の塔屋は一度解体されましたが、平成に入って復原されました。ここには、歴史的な建物を往時の姿で残そうとする平成の歴史的な建物への姿勢が良く表れていると思います。
時代によって、まったく異なる建築へのアプローチが一目瞭然。ぜひ、この2つの建物の対比も楽しんでみてください。
基本情報
高岡市伏木気象資料館
住所: 〒933-0112 富山県高岡市伏木古国府12-5
電話番号: 0766-44-6905
休業日: 火曜日(祝日の場合はその翌日)、12月29日~1月3日
アクセス: JR氷見線伏木駅から徒歩約3分、能越自動車道高岡北ICから車で約20分
駐車場: あり(無料)

④高岡市万葉歴史館|万葉集の世界に浸る体験型施設
万葉歴史館は、奈良時代の歌人・大伴家持(おおとものやかもち)が越中国守として赴任していたことにちなみ、万葉集の世界を紹介する施設です。
館内では、万葉集に関する展示や体験型のプログラムが用意されており、1300年前の日本人の感性にふれることができます 。
万葉集とは?奈良時代の富山とは?
万葉集は日本最古の和歌集で、天皇から名もなき人々まで、幅広い身分の詠み手による約4,500首の和歌が収められています。
その中でも大伴家持は重要な歌人のひとりで、越中国守としての5年間の在任中に200首以上の歌を残しました。
ここでは、そんな家持の足跡をたどりつつ、万葉集の成立からどのように人々に親しまれてきたのか、さらに、奈良時代の越中の風土や文化も学べます。
体験しながら楽しめる!万葉の時代の感性にふれる展示
万葉歴史館の魅力は、見るだけではなく「体験できる」展示が豊富なこと。
奈良時代の書き方で自分の名前を名刺に
万葉仮名で自分の名前を書く体験ができ、思い出にもぴったり。私も自分の名前を書いてみました。
万葉衣装体験
定期的に衣装体験イベントが開催されます。
奈良時代の色鮮やかな衣装を着て、館内を散策してみませんか?
大人用・子ども用の衣装が用意されており、家族連れやカップルにも人気です。服だけでなく、冠や髪型までセットしてもらえるので、全身コーディネートの素敵な万葉人になれますよ。
次回は2025年11月1日(土)~3日(月・祝)に予定されています。
自然と一体になれる庭園と立山の眺望
万葉歴史館は高台にあり、天気がよければ立山連峰を一望できます。
「大伴家持も、同じような景色を眺めていたのでは」と想像をふくらませながら、四季折々の草花が彩る庭園を散策すれば、万葉人の感性により近づけるかも?
季節ごとに特別企画展も開催
常設展のほか、時季ごとの企画展示も開催されており、訪れるたびに新しい発見があります。
たとえば、筆者が訪れた際は、大河ドラマと関連した「万葉集と蔦屋重三郎 」展が開催されていました。
また、定期的に企画展や講演会が催されているので、ぜひイベント情報をチェックしてみてくださいね。
高岡で“万葉の心”を体感しよう
大伴家持が生きた奈良時代の建物や道具は残っていませんが、彼らの「ことば」や「感性」は1300年の時を超えて、私たちの心に届きます。
万葉歴史館で、万葉集の世界とじっくり向き合ってみてはいかがでしょうか。
基本情報
高岡市万葉歴史館
住所: 〒933-0116 富山県高岡市伏木一宮1-11-11
電話番号: 0766-44-5511
休館日: 火曜日(祝休日の場合はその翌日)、12月29日~1月3日
アクセス: JR氷見線伏木駅から徒歩約25分、能越自動車道高岡北ICから車で約20分
駐車場: あり(無料)

観光の合間に立ち寄りたい伏木のおすすめグルメ・お店
パンドリーム|地元で愛される素朴なパン屋さん
町歩き前の朝食を買いに行きたいのが、早朝から開店しているパンドリーム。お客さんがひっきりなしにやってくる、地元で愛される人気店です。
朝早くから、いろいろな種類のパンが所狭しと並んでいて、どれも美味しそうで、選ぶのが大変!
どれもお手頃価格なので、ちょっとくらい買いすぎても大丈夫(?)、小腹がすいたとき用のおやつパンにもいくつか買っていきましょう。
パンドリームの一押しパンが「ヴィエノア」。
びっくりするくらい長ーい、もっちりフランスパンにクリームがたくさん挟まれています。
パンの食感×ふわふわクリーム×チョコスプレーの食感3重奏が楽しくて、そして、もちろん美味しくて、ぺろりと食べてしまいますよ。
我が家もパンドリームに行ったら、必ず買う大好きな逸品です。
住所:富山県高岡市伏木古国府3-429-1
電話番号:0766-44-3944
アクセス:JR氷見線「伏木駅」から徒歩約15分
駐車場:あり
飯倉商店|駅前のラーメン屋さん
伏木駅から徒歩数分のところにあるラーメン屋さん。
一番人気のトリコツ(鶏骨)ラーメンはびっくりするほど黄色!鶏の出汁がたっぷり出ているのが、一目で分かります。
そして、スープを口に含めばガッツンと鶏の旨みが直撃してきます。まるで、焼き鳥を食べているのかと錯覚するほどです。
スープはとっても濃厚でトロトロ。麺によく絡んで、口の中が幸せでいっぱいになります。
トリコツラーメン、気になった方はぜひ!
住所:富山県高岡市伏木古国府1-10
電話番号:0766-75-9286
アクセス:JR氷見線「伏木駅」から徒歩約1分
駐車場:なし(伏木駅前観光駐車場を無料で利用可能)
SUNNY COFFEE|旅の途中でほっと一息つけるカフェ
可愛らしい店内で美味しいコーヒーと手作りのスイーツが楽しめるカフェ。
丁寧にハンドドリップされたコーヒーと、売り切れ必至の人気ケーキで休憩していきませんか?
いくつかあるコーヒーの中からサニーブレンドを選択。お店のおすすめコーヒーです。すっきりした苦みと芳醇な香りを楽しめました。
一緒にいただいたバスク風チーズケーキはとろりと濃厚で、コーヒーとの相性抜群。大変美味しかったです!
レジ横には、手土産にぴったりの焼き菓子がたくさん売っているので、いくつかお土産にどうぞ。
住所:〒933-0113 富山県高岡市伏木中央町2-1
電話番号:080-4172-2694
アクセス:JR氷見線「伏木駅」から徒歩約8分
駐車場:あり(中道商店街お客様駐車場を利用)
ライタープロフィール
参考文献
- 富山県近代史研究会歴史散歩部会(2008).『富山県の歴史散歩』.山川出版社
- 高岡市万葉歴史館(2015).『越中万葉をあるく 歌碑めぐりMAP』.笠間書院
- 富山県公文書館(1998).『とやまの歴史』.富山県
- 梅原隆章、北沢俊嶺(1978).『富山の寺社』.巧玄出版
- 高岡市美術館(2018).『本坊一般公開記念 勝興寺展』.高岡市美術館
- 富山大学 地域づくり研究会(2020).『大学的富山ガイドーこだわりの歩き方』.昭和堂
古い街並みや文化に触れるのが好きで、「歩いて素敵なものを見つける旅」が私のスタイル。
高岡の魅力を、自分の足で歩いて感じたままに伝えます。